頭皮のかゆみやフケ、時にはじくじくと浸出液がでるなど、頭皮湿疹に悩む方は少なくありません。
かゆみで手がつい頭にいってしまったり、フケが落ちたりするというお悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
頭皮の湿疹は、一度よくなったとしても繰り返すこともあるため、どのような原因が考えられるか確認してみましょう。
ここでは、頭皮湿疹の原因と、頭皮湿疹の治療を補助し、再発を防ぐための日常的なケア方法について詳しく解説します。
※注意
本コンテンツでは、例として頭皮湿疹に関連する疾患をご紹介いたします。
ただし、頭皮に湿疹を伴う疾患は他にも様々なものがあるほか、さらに、原因の異なる疾患が併発している場合なども考えられます。
適切なスキンケアで対策を行っても頭皮湿疹がくり返し発生する、重篤な症状があるなどの場合は、自己判断で対処するのではなく、必ず皮膚科専門医の先生に相談するようにしましょう。
頭皮湿疹とは、毛髪の生え際から首筋、耳の裏など頭部のどこかに湿疹症状が生じている状態を指します。
湿疹は、何らかの原因で生じた皮膚表面の炎症で、赤み(紅斑:こうはん)、ぶつぶつとした丘疹(きゅうしん)や水疱(すいほう)などの皮疹、かゆみやヒリヒリ感など、さまざまな症状を呈する皮膚疾患の総称です。
頭皮にかさぶたができることもあります。
頭皮湿疹でかきむしる、かゆみで寝られないなど、日常生活に支障があるほど症状が強い場合には、炎症を抑えるステロイド外用薬なども活用しましょう。
市販薬の活用については下記の記事にて詳しく解説しておりますので、ご参照ください。
頭皮湿疹の原因となる疾患として、脂漏性皮膚炎(脂漏性湿疹)、接触皮膚炎(接触性皮膚炎)、アトピー性皮膚炎などがあげられます。各疾患の特徴的な症状と発症の原因、日常のケアについて解説します。
脂漏性皮膚炎は、頭部や顔など皮脂の分泌が盛んな部位に発症します。
脂漏性皮膚炎の特徴は黄色っぽくかさかさしたフケや、頭皮の炎症、かゆみなどがあげられます。皮脂の分泌が多く頭皮がベタベタしている方に多く見られ、頭皮を覆うように黄色っぽいかさぶたが発生することもあります。
慢性的で繰り返すことが多い疾患です。
脂漏性皮膚炎の原因は頭皮のカビと過剰な皮脂分泌です。
実は誰の頭皮にも、皮脂を好むカビの一種“マラセチア菌”が常在しており、そのカビが皮脂を分解することで遊離脂肪酸とよばれる物質が産生され、カビによって発生した遊離脂肪酸は頭皮を刺激し炎症をひきおこします。
皮脂分泌量が多いこと以外に、そもそもカビが増えやすい体質などが要因となるため、毎日シャンプーをして清潔にしていても解消が難しい場合もあります。
皮膚科を受診した際にはステロイド剤と抗真菌(抗カビ)薬の外用剤を処方される場合があります。しかし、カビの増殖には体質が関わるため、よくなったといって中止すると再度カビが増殖してかゆみが現れます。
改善後にも長期的にかゆみを防ぐには抗真菌(抗カビ)成分配合のシャンプーが適しています。
一度よくなっても再度かゆみなどの症状が現れる方には、継続的な使用をおすすめします。
アトピー性皮膚炎は、強いかゆみのある湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。乳幼児期に発症することが多く、小児、思春期・成人期と年齢によって皮疹の分布は変化します。体幹や四肢に発症するほか、頭皮もアトピー性皮膚炎の発症部位のひとつです。
皮膚の角質や表皮に異常があり、バリア機能が生来的に低い方に発症しやすいとされており、そこに環境的な要因が加わって発症すると考えられています。さまざまなものがアレルゲンとなりますが、アトピー性皮膚炎は脂漏性皮膚炎の原因の一つであるカビの一種“マラセチア菌”がアレルゲンとなる症例も報告されています*。
アトピー性皮膚炎とマラセチア菌との明確な関連性はまだはっきりしていない部分も多いのですが、頭皮にかゆみがでるようなケースでは、抗カビ成分配合のシャンプーを頭皮のかゆみを防ぐ目的で一度試してみていただくことも選択肢の一つといえます。
*参考文献:
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021 (日皮会誌:131(13),2691-2777,2021)
接触皮膚炎は、いわゆる「かぶれ」といわれる皮膚炎です。
何か特定の製品の使用後に肌に異常が現れるようであれば接触皮膚炎の可能性も考えられます。
接触皮膚炎は原因物質に接触することで皮膚に炎症が発生します。
原因物質が触れた部分が赤くなったり、ぶつぶつや水疱が出来たりするのが特徴です。
シャンプーやリンス、育毛剤や毛染め、パーマ液など、あらゆる成分が原因となる可能性があります。
洗い流す製品の場合、頭皮だけでなく、洗い流したお湯が付着することで、顔や首、背中、手などさまざまな部位に症状が出ることもあります。
最初は問題無く使える製品でも、繰り返し皮膚に接触する過程で製品に含まれる成分がアレルゲンとして認識(感作)され、かぶれの原因となる成分もあります。
今まで使えたものが急に使えなくなることもありますので、今まで使っていた製品であっても、頭皮や肌に異常があらわれるようであれば速やかに中止するようにしましょう。
特定の製品を使用した後に肌に異常が現れる場合には、その製品の使用を速やかに中止することが大切です。
また多くの製品で同様の症状が現れる場合には、スキンケア製品などでよく使われる特定の成分にアレルギーを持つ場合も考えられます。皮膚科専門医に相談するようにしましょう。
肌にあうシャンプーやリンスがなかなか見つからない場合、配合成分が少ないシンプルな処方の製品を使用することもおすすめです。
また、シャンプーやリンスなど洗い流して使用する物は、すすぎ残しのないようにきちんとすすぎます。さらに、すすいだ液がなるべく体の皮膚に残らないように、シャンプー、リンスの後に体を洗うようにすることも日常ケアの工夫の一つです。
頭皮湿疹を繰り返す場合には、必ず皮膚科専門医に相談しましょう。
その理由は以下の通りです。
皮膚科専門医では、頭皮湿疹の発症部位、症状、経過、発症の場所、発汗の有無、日光との関連性、職業、趣味、化粧、家族歴など詳しい問診をおこない、必要であればパッチテストをおこなうことで、原因が特定できる場合があります。原因が特定できれば、接触の機会を避けることで再発を防ぐことができます。
セルフメディケーションがすすめられており、市販薬を使用することも多くなりました。特にステロイド外用薬は症状がすぐに治まるため、過剰な連用によって皮膚に副作用が起こる可能性もあります。
かゆみを一時的に抑えても根本的な原因の特定・改善が出来ない限りは何度でも繰り返すことも考えられますので、長期的な使用はおすすめできません。
添付文書に記載の使用方法をしっかりと守ることが大切です。
皮膚科専門医を受診する理由のひとつには、専門的な観点から、頭皮湿疹の発症や悪化につながる日常生活の改善すべき点、シャンプーをしても良いか、またどのようなシャンプーを使うべきかなど指導を受けることができることがあります。
頭皮湿疹の症状を繰り返す方は、どのような製品を選ぶか迷う事が多いと思います。
そのような時にはパッケージやホームページをご覧いただき、低刺激性、またはパッチテストなど各種安全性試験などを実施している記載があるかなども判断基準になります。皮膚科を受診した際に、症状にあった製品を紹介してもらうのも一つの方法です。
人によって合う合わないがありますので、実際に使用して刺激を感じるなど合わない製品は速やかに使用を中止するようにしましょう。
この記事では、頭皮湿疹の主な原因として脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎を取り上げ、それに応じた治療や対策方法、日常のケア方法などについて解説しました。
脂漏性皮膚炎は、頭皮の皮脂を常在菌が分解してできた産物が刺激となり発症すると考えられており、頭皮の赤みやフケ、かゆみが特徴です。
アトピー性皮膚炎は乳幼児期から発症しますが、頭皮にも湿疹がおよぶことがあり、頭皮湿疹の原因のひとつでもあります。
接触皮膚炎は、頭皮に触れた物質が原因で炎症が起きて発症します。シャンプーや毛染めなど、あらゆる製品で発生する可能性があるため、肌に合わないと感じる製品は速やかに中止することが大切です。
いずれの場合でも、かゆみや湿疹の症状が強い場合には、炎症を抑える外用薬で治療をおこないますが、再発がみられるケースでは継続的な日常ケアを合わせておこなうことが、症状の改善や再発予防のためには大切です。
特に頭皮をすこやかに保つための日常ケアとして、シャンプー選びの工夫があります。
例えば、フケやかゆみが気になる方は抗真菌(抗カビ)成分配合のシャンプー・リンスを使用するようにする、敏感肌の方は肌にやさしいシンプル設計のシャンプーを使用するようにするなど、肌質や頭皮悩みに応じた適切なシャンプー選びを意識するようにしましょう。