ニキビが出来た場合、どのようなケアを行っていますか?
ニキビとひとくちにいっても、その症状や経過は人それぞれ。
ニキビが出来てしまっても、きれいに治る場合もあれば、誤ったスキンケアなどによって炎症が悪化し、痕(あと)が残ることもあります。
ここでは、誰もが経験するニキビの原因や種類、日々のスキンケアについて解説します。
さらに、近年の研究により、ニキビの原因に「マラセチア菌」と呼ばれるカビ(真菌)の一種が関わることもわかってきています。
ニキビの原因を確認しながら、正しいスキンケアについて確認していきましょう。
※ 皮膚科専門医のもとで早期にニキビ治療を行うことにより、ニキビ痕(あと)を残しにくくきれいに治すことも可能になってきています。ニキビが出来てしまった際には症状が軽い内に、早めに診てもらうようにしましょう。
ニキビは思春期以降にホルモンバランスが変化することで皮脂分泌が過剰に増え、毛穴が詰まり、そこに菌が関わって炎症をひき起こすことで発症する、慢性的な皮膚の病気です。正式な名称は、「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」といいます。
ニキビは、日本人の90%以上の人が経験するといわれており、ごく一般的な皮膚疾患のひとつです。
顔、胸や背中などにできやすく、悪化すると痕(あと)が残ることもあります。
治った後もニキビ痕として残ってしまうため、ニキビ痕が残らないよう早期に治療することが重要であると考えられています。*1
*1尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023, 日皮会誌:133(3),407-450,2023
ニキビはさまざまな原因により、皮脂腺から分泌された皮脂が毛穴につまることで発生します(白ニキビ、黒ニキビ)。悪化するとニキビは炎症を起こし、赤ニキビなどと呼ばれることもあります。
ニキビにはどのような種類があるのか詳しくご紹介します。
ニキビのはじまりともいえる、皮脂が毛穴につまっている状態を面皰(めんぽう)といいます。
このうち、毛穴が表皮によってふさがれ、中に溜まった皮脂が透けて白く見えている面皰を白ニキビ(または白色面皰、閉鎖面皰)といい、一方、溜まった皮脂の塊によって毛穴が押し広げられ開口し、その表面が汚れや酸化皮脂によって黒く見えるものを黒ニキビ(または黒色面皰、開放面皰)といいます。
どちらも、まだ炎症は起きていない状態で、炎症が起きる前に皮脂が排出されれば、ニキビは痕を残さずきれいに治ります。
しかし、皮脂が詰まった状態が続くと、皮脂を好む菌が増殖し、炎症をひき起こします。
赤ニキビは、菌が毛穴の中で増殖し、毛穴に溜まった皮脂を分解することで発生する刺激物(遊離脂肪酸)などにより、炎症を起こした状態を指します。
ニキビの炎症に関わる菌は、細菌の「アクネ菌」が有名ですが、近年ではカビ(真菌)の仲間の「マラセチア菌」もニキビとの関与が研究されています。
「アクネ菌」も「マラセチア菌」も、どちらも誰の皮膚にも存在する皮膚常在菌です。
赤ニキビは炎症が軽度であれば、色素沈着が残ってしまっても、時間経過によるターンオーバーと共に軽減することが多いです。しかし炎症が強い場合には真皮や皮下組織にもダメージがおよび、治った後にもでこぼことした痕(あと)が残ることもあります。
ここでは、ニキビができる主な原因について解説していきます。
ニキビができる原因のひとつは、皮脂の過剰分泌です。ニキビは思春期以降にできやすくなりますが、それは思春期になると性ホルモン、特に男性ホルモンの分泌が増えることで皮脂腺が刺激され、皮脂の分泌が増えるためです。
その他、生理前などにも性ホルモンのバランスが変化することで、皮脂分泌が過剰になり、ニキビの原因になることがあります。
毛穴のつまりは皮脂の排出を妨げ、白ニキビの原因になります。では、なぜ毛穴がつまるのでしょうか。
それは、皮膚表面への皮脂の通り道である毛包漏斗部(もうほうろうとぶ)の過剰な角化が原因といわれています。
毛穴の通り道が細くなることで、皮脂が外部に排出されにくくなり毛穴内に貯留します。
ニキビが悪化する原因には、主にアクネ菌が関わっているほか、近年の研究によると、カビ(真菌)の一種であるマラセチア菌もニキビの悪化に密接に関わっているということがわかってきました。
アクネ菌、マラセチア菌はともに誰の皮膚にも存在する常在菌で、皮脂を分解して栄養にする過程で遊離脂肪酸という物質を作り出しますが、その遊離脂肪酸は皮膚刺激となり、炎症をひき起こすことが分かっています。
さらに、ニキビがある方の皮脂を調べたところ、赤ニキビの数が多い方ほど皮脂中のマラセチア菌の数も多い傾向があるという報告*2や、ニキビのある方の皮膚の表面やニキビの内部に存在している菌の種類や量を調べた研究では、皮脂の多いTゾーンにおいてアクネ菌が多く、加えてマラセチア菌も多数検出されたと報告されています。*3
ニキビとアクネ菌の関係は以前より知られていましたが、マラセチア菌というカビ(真菌)に着目したニキビ治療については、今後のさらなる研究が待たれるところです。
*2 J Dermatol . 2016 Aug;43(8):906-11. doi: 10.1111/1346-8138.13245
*3 Clin Cosmet Investig Dermatol. 2022 Sep 21:15:2003-2012.
カビの一種、マラセチア菌が関わる疾患「マラセチア毛包炎」について、詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
できてしまったニキビを悪化させないためには日々のスキンケアの方法についても考える必要があります。新たなニキビの発生を防ぎ、今あるニキビを悪化させないためのスキンケア方法について紹介します。
ニキビ肌の洗顔方法のポイントをご紹介します。
1日2回朝晩の洗顔がすすめられています。
ニキビを防ぐために、原因となる過剰な皮脂や菌、詰まりの原因となる角質を洗い流すことは理にかなっているといえます。
洗顔は、朝晩の2回とも洗顔料を使用します。朝は寝ている間に分泌された皮脂、晩は汗や皮脂などの1日の汚れを落とす必要があるためです。洗顔料をよく泡立てて、ニキビを潰さないように、泡でなでるように優しく洗うのがポイントです。その後、十分な量の水で泡を流しますが、特に、フェイスラインは洗顔料が残りやすいので、すすぎ残しがないように心掛けることが大切です。
ニキビでお悩みの方には抗菌成分と抗カビ(抗真菌)成分配合の洗顔料もおすすめです。洗浄・殺菌によって皮膚表面の菌数を減らし、ニキビを防ぐ効果が期待できます。
イソプロピルメチルフェノールなど、薬用石鹸に配合の抗菌成分はアクネ菌の増殖を抑制する働きがあり、また抗カビ(抗真菌)成分ミコナゾール硝酸塩を配合した洗顔料はニキビの悪化に関わるといわれているカビ(真菌)の一種「マラセチア菌」も増殖を抑制します。繰り返すニキビに悩む方にはおすすめの洗顔料です。
また、プッシュで泡が出てくるタイプの洗顔料もおすすめです。
洗顔中にニキビをこすったり、潰したりしないように気を付けましょう。
つい膿をもったニキビをつぶしてしまうという方は、泡でなでるようにして洗顔し、指先を肌に触れないよう心掛けてみてください。
鼻の脇や目頭など細かい部位を洗う際には、力の入りにくい薬指と小指を使うようにするなど、ニキビをうっかり潰さないための工夫が必要です。
保湿もニキビ肌のスキンケアには大切です。ニキビは皮脂量が多い方が発症するイメージがありますが、額や鼻筋(Tゾーン)は皮脂が多くても頬や顎は乾燥しているなど、部分的に肌の乾燥が現れることもよくあります。
ニキビ肌だからといってさっぱり感を重視し保湿力の不足している基礎化粧品を選んでいると、乾燥による肌トラブルが併発しやすくります。
頬のカサカサ感が気になるなど、乾燥を伴うニキビ肌の方は、オイルカットをうたっているスキンケアを使用するよりも、適度な保湿力があり、かつノンコメドジェニックテスト済み※の基礎化粧品を選ぶのがよいでしょう。
※ノンコメドジェニックテスト:ニキビの原因になりにくいことを確認するテストです。すべての方にニキビが出来ないわけではありません。
ニキビができやすく悪化しやすい方は、生活習慣の中に、その原因があるかもしれません。そこで日常生活で気を付けるポイントをご紹介します。
「洗顔時のNGポイント」にも記載しましたが、ニキビを潰すことはおすすめしません。炎症の起こっていない白ニキビ、黒ニキビを潰すことで、菌の感染がおこり、炎症につながることもあります。
また、膿をもった赤ニキビを潰すことで炎症を悪化させてしまうこともありますし、爪で引っ掻く・押しつぶすことで皮膚の損傷につながることもあるためです。
炎症は色素沈着などのニキビ痕につながるため、炎症悪化につながる行為は避けましょう。
睡眠不足や夜更かしが続くと皮脂の分泌や肌のターンオーバーに関係するホルモンのバランスが崩れることで、ニキビのできやすい肌環境になります。そのため、規則正しい生活を心がけ、良質で十分な睡眠をとるように気を付けることが大切です。
健康を維持するためには、バランスのとれた食事を心掛けることが大切です。
ニキビにはチョコレートなど、油分の多い食品がよくない印象がありますが、実際にはニキビと食品との関係は明らかになっておらず、特定の食材に対する食事制限はおすすめしません。
この記事では、ニキビの原因や、ニキビの種類、ニキビ肌のスキンケアのポイントなどについて解説しました。
思春期以降、ホルモンのバランスが変化することで皮脂の分泌が増え、毛穴がつまりやすくなり面皰ができることがニキビのはじまりです。面皰の中で皮膚の常在菌である「アクネ菌」や「マラセチア菌」が増殖すると炎症が起き、治った後にはニキビ痕が残ることも多いです。
ニキビ肌が気になる方は日々のスキンケアでポイントを抑えた洗顔料を選び、正しい洗顔方法を実践することが大切です。
また、どのような洗顔料を使った場合でも、洗顔中にニキビをこすったり潰したりしないことが大切であることも再度確認しましょう。
スキンケアでの対策が難しい場合は、痕を残さずにきれいにニキビを治すためにも、早めに皮膚科専門医を受診することも検討しましょう。
抗菌成分イソプロピルメチルフェノールと抗カビ(抗真菌)成分ミコナゾール硝酸塩をダブルで配合したニキビを防ぐ洗顔料